Empreinte de chameau🐪ラクダの足あと
🌴モーリタニア🌙 砂漠を旅する🌴 No.4 🐪加藤智津子
砂漠の愛すべき生きもの:ゴミムシダマシ
満月の砂漠は明るい。
テントのなかにいても明るい。
歩くにも、懐中電灯が不要なほど明るい。
満月の夜には、
砂に影をおとす独特な樹形のアカシアや朽ちた古木等、色をおさえた幻想的な世界が広がる。
そんな世界を描く画家になれたなら、、、と、いつも思う。
夜の砂漠は生きものの動く音も息遣いも、砂が吸収してしまうかのように聞こえない。
ただ、翌朝、風紋の上に無数の痕跡が残る。
Photo: モーリタニア アドラール州 シンゲッティ 「デンドライト」(*1)の上のゴミムシダマシ(*2)
砂漠でハリネズミの歩く姿を見つけると、連れて帰りたくなるほどかわいい。
膝にのってくるトビネズミはもっと健気でかわいいが、食物連鎖で、天敵、蛇が近くにいるかもしれない。
フェネックは遠くで声はするけれど、用心深く、人の気配のするところには簡単には近づかない。
ノマド(遊牧民)の家畜(ヤギやヒツジ)を狙ってくるシャッカル(chacal)は いつも犬に追い払われる。
満月の夜、光のあるところにすぐにやってくるのはゴミムシダマシ(Ténébrion)。
残した食べ物、お茶ガラに寄ってきて、元気に動き回り、交尾までする。
モーリタニアでは種類も多く、スカラベよりポピュラーな砂漠の住民。
甲羅にたまった朝露、ときに花びらを食べて水分をとっている姿も見かける。
日中の暑いときには砂にもぐる。
砂漠という環境に適応した生き物だ。
さらに、寒さにも強く、マイナス低温下(機内のスーツケース内)では、仮死状態で耐える。
たまたま生還しない個体がいて、それらを標本にしたところ、間もなく、標本箱からハエが飛び立った。
死因はゴミムシダマシの体内で成長したハエだった。
ゴミムシダマシは産卵後3日で孵化し、幼虫、さなぎで約1ヶ月過ごし、成虫となる。
そして、寿命は半年と短い。
フェネックもハリネズミも屋内飼いでの寿命は長いが、過酷な環境や外敵の多い砂漠では、そう長い命ではない。
どんな生きものでもいい、砂漠に生きるものたちのために、いつもアカシアの根元に、食事の残りを置いて去ることにしている。
(*1) デンドライト(Dendrite)
堆積岩の岩石の節理(割れ目)へ二酸化マンガンしみこみ、シダ状の模様がつくられた石
日本では「しのぶ石」とも言われる
ノマド(遊牧民)のテントの脇にこんな石が無造作に積まれている
(*2) ゴミムシダマシ(Ténébrion)
これは 「Pamela ascendens」:甲虫目(Coleoptera)、ゴミムシダマシ科(Tenebrionidae)の1種
日本にサハラのゴミムシダマシを連れてきました(今はいません)
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