Empreinte de chameau🐪ラクダの足あと
🌴モーリタニア🌙 砂漠を旅する🌴 No.18 🐪加藤智津子
① 「すべての ひとに 石が ひつよう」ー 砂漠で友たちの石を見つける
1994年に刊行され、多くの人が石(小さな地球)に眼を向けるきっかけになった絵本は、以下の書き出しで始まり、「特別な石」を見つけるための10のルールを教えてくれる。
すべてのひとに 石がひとつ ひつよう。
友たちの石を 持っていない 子供は かわいそう。
どんな石でも いいのでは ない。
わたしが 言っているのは 特別な石。
あなたが 自分で見つけて いつまでも 永遠に 大切にできるような 石。
「すべての ひとに 石が ひつよう」
バード・ベイラー著/ピーター・パーナル画 河出書房新社
Photo:モーリタニア ティリス・ゼムール州
約6億年まえの氷河堆積物の石
初めて砂漠へ行くと、誰もが必ず砂を持ち帰る。
ペットボトルに美しいオレンジ色の砂を詰めるが、結構重い。
砂は元々、石だった。
石が温度差や風化作用を経て、割れ、風に飛ばされ、ぶつかり合うことで角が取れて小さな丸い粒になった。拡大すると、宝石のようにきれい。
次第に、砂漠にはたくさんの石があることを知るようになる。
とても不思議で、とても珍しく、とても美しい石があることに気がつく。
そんな石から砂漠の成り立ち、自然や地形、地質、とてつもなく長い歴史、、、、最後には地球を考えるまで辿り着いた。
そうして、それらを知りたいと思うようになる。
もはや、石なくして、私の砂漠の旅はあり得ない。
石といえば、私はストロマトライトしか関心がなかった。
でも、ある日、初めて「特別な石」を見つけた。
まだ、この絵本と出会っていないころで、「特別な石を見つけるための10のルール」から私の場合を振り返ってみる、、、
🐪(太文字は本文からの抜粋)
私の特別な石は砂だらけの道で、頭を地球にふせるようにして見つけた。
手のひらに包み込めるほど小さくはないけれど、さわっていてとても気持ちのいい石。
そして、その石はまさに地球のなかからきたもので、毎日 毎日 風と太陽にさらされていた。
実際は数億年にもわたって。
あまりにも大きな石はえらばないというが、やはりポケットのなかに入れるには300グラムは少し重いかもしれない。
だから、持ち歩くときには、刺繍のあるしっかりとしたフェルトの袋に入れてバッグのなかにしまう。
石の形はあなたにまかせる、といわれるまでもなく、特別な石は葛まんじゅうのような形だった。
かんぺきな色は、私にとっては、今まで見たこともないような不思議な色。
石の葛まんじゅうの薄皮は淡いベージュ色、なかの餡は深い赤色で、その濃淡が透けて見える。
誰もが「おいしそうな石ね」という。
釘で擦っても傷つかない石なのに、そのときばかりはわざわざ布に包んで、いつもはストロマトライトの収まるスーツケースの一番いい場所に入れて持ち帰った。
ただ、この特別な石を見つけたときは もっともっと輝いていたように思う。
砂漠の光は何もかもを美しく見せるから。
次は私と一緒に砂漠に里帰りさせて、サハラの太陽を浴びさせたい。
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