Empreinte de chameau🐪ラクダの足あと
🌴モーリタニア🌙 砂漠を旅する🌴 No.10 🐪加藤智津子
砂漠の雨 - ②
冬の夕方、白い雲が出てくるが、雲の位置は低い。
その日は、そのまま暮れた。
白い雲は雨の前兆だったのか、雨雲だったのか、翌日の夕方には空高く広がり、雨がパラパラ落ちてきた、、、、。
砂漠の野宿で困るのは雨と強風。
火が使えない!
運転手兼調理人は早々に、夕食の支度を始め、私は薪にするアカシアの枯れ枝を集めに行く。
暖をとるためと、お茶用に。

Photo:モーリタニア アドラール州 エル・ベイヤード
普段、草も生えない砂砂漠にジルジィールが茂る
砂漠の旅で雨を体験することはそうないが、深夜、雨まじりの風がしばし、テントを揺らした。
さすがに翌朝は寒く、焚き火の前で、お茶を飲み、出発。
太陽は雲のなかにぼんやりと輪郭だけが見える。
大粒の雨がランドクルーザーのフロントガラスを濡らし始め、運転手は珍しくワイパーを作動させた。
常に乾燥していた砂漠だけに、高湿度は何とも気分が滅入る。
昼食は、何度か訪れたアイシャ(*1)と呼ばれている巨大な石の中だった。
内側に立って歩ける空間がある。
石を伝わって流れてくる雨を見ながら、昨夜の残りの食事(タジン)を温めなおして食べる。
雨は、その日で終わった。
こんなふうにして降る雨で、しばらくすると砂漠に眠っていた種が一斉に芽吹く。
ラクダやヤギの大好物の、小さな紫の花をつけたジルジィール(*2)が、砂漠を牧草地のように見せる
ほどに育つ。
母ラクダ、母ヤギの母乳には最高の餌だ。
ラクダの母乳が多く出れば、おすそ分けもあるかもしれない。
市販のパック入りのラクダミルクも販売しているが、やはり生乳は断然、美味。
ヤギ乳でチーズやクリームなどの加工品を作る。
モーリタニアのノマドたちは、そのクリームをパスタにからめたり、ナツメヤシに付けて食べる。
家畜を育てるノマドにとっては嬉しい雨だ。
さらに、その雨は野菜の栽培も可能になる。
雨の降った年には、甘いスイカやメロンが道路で販売される。
それを購入し、地方の友人へのお土産にするととても喜ばれる。
砂漠には太陽が似合うが、雨は適度に必要。
(*1) アイシャ (Aïsha )
高さ 496メートルのモノリス(一枚岩).
シュームからヌアディブへ向かう途中に幾つものモノリスが点在する.
なかでも、 5キロ離れたところにあるベナミラ(Ben Amïra)は 633メートル)で、アフリカで一番高い.
(*2) ジルジィール (Jerjir)
アブラナ科の一年生植物。肉質の細長いハート型の葉、紫色の房状の花.
雨の後、砂質土壌で急速に成長し、砂漠が牧草地のように変わる.
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