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Empreinte de chameau 🐪 ラクダの足あと

🌴モーリタニア🌙砂漠を旅する🌴No.29  🐪 加藤智津子

砂漠で野宿 ー 密かに野宿する


砂漠での野宿は、火を使うので風を避け、厄介な生き物が潜んでいそうな草むらのあるところは避ける。

でも、「人目につかない場所」を選びたい。


ある日、いつもはお茶を飲んで休憩していたところで、野宿をすることになった。

後々の行動を考えると、このあたりで泊まる方がいいとドライバーは考えたようだ。

私としては通過してきた石の多い砂漠の方が良かったけれど、旅では後戻りはしないのが原則。

Photo: アドラール州 シャール、なだらかな砂丘が広がる

年々、アカシアが大きくなってきている。砂丘の下には膨大な水があり、道路工事の際に汲み上げて利用された。近くには立派なナツメヤシの育つオアシスもあり、親しくしているノマド夫妻が住む。


遠くから見ると、アカシアの林だが、ソドムのリンゴ(*1)も多い。

テントをセッティングし、お茶を飲んでいると、滅多に車が通ることのない砂漠道路をハイラックスが走行してきた。

すると、車は止まり、ひとりの男性がこちらに向かって歩いて来た。

「ラクダを見なかったか」

よくある質問だ。

1時間ほど前に、原生代の氷河堆積物のあるあたりで、アカシアの葉を喰みながら歩いていた親ラクダ2頭と小ラクダ2頭がいた。

彼はお礼を言い、すぐ去って行った。それだけで十分だ。

砂漠には目立つものはそうないが、経過した時間でラクダはどのあたりまで歩いて行ったのかわかるようだ。


また、モーリタニアの砂漠を南北に貫通する道路で小さな村へ行った帰路、3日目のことだった。

数年間かけて完成した舗装道路だったが、やはり滅多に車は通らない。

いつものように、道路からかなり外れたアカシアと石のあるところに野宿を決め、荷物を下ろしたとき、ドライバーが私を呼んだ。

「ガゼル(*2)の糞がある」。

「え〜、どれどれ」、思わず日本語になる私。

ガゼルは砂漠で一瞬、見たことがあるが、素早い動きをする。今までここにいたとは、ちょっと感激だ。

そして、テントを組んでいたときだった。

数人の乗ったランドクルーザーが、アカシアの木立を縫うようにしてやってきた。

なんと、ドライバーの知人たちで、ガゼルを探しているそうだ。ひとりは私もよく知った人の父上だとあとで聞いた。

「ここにいたなんて教えない。教えたら、辺りがうるさくなるだろう」

新しい轍を見つけてやってきたら、私たちだったのだ。


所詮、砂漠で「人目につかない」なんてことはありえない、誰とも会わない未舗装道路でも、誰かに見られていると思っていい。

砂漠で眠っているときに、車の通過する音が微かに聞こえてきた。

普段ですら、対向車にも出会うことのない砂漠である。深夜に、誰が、どこへ?と考える。

2日後に会ったノマドに聞くと、ひとりで旅しているフランス人だと即答された。


砂漠で「密かに」は、なかなか難しいことのようだ。

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(*1) ソドムのリンゴ: Pommier de Sodome

学名は Calotropis procera、モーリタニアではトゥールゥジャという.

アフリカからインドまで, 広く分布し, 一瞬の雨でも発芽し, 紫の花をつける.

(*2) ガゼル:ドルカスガゼル 学名はGazelle dorcas (Gazella dorcas)

ウシ科・ガゼル属. 非常に機敏. 最高速度90キロで走ることができ, 高さ1.75m, 長さ4m程度まで, 何度も連続してスタントジャンプをすることができる. かつてはサハラに多くいたが, 今は少ない.

 

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© Chizuko Kato

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