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Empreinte de chameau🐪ラクダの足あと

🌴モーリタニア🌙砂漠を旅する🌴No.30  🐪 加藤智津子

逞しい砂漠の植物、ソドムのリンゴ 、Calotropis procera


砂漠は植物が根付くにはとても厳しい環境といえる。

それでも、ナツメヤシとアカシアだけは逞しい。

ナツメヤシは実を収穫するために、多くはオアシスで育つが、甘く、ビタミンとミネラルが豊富。砂漠では生クリームを添えて食べる。

さらに逞しいのは、アカシア。水源があれば、地中深くまで長く根を伸ばし、枝を大きく広げる。

しばし、人々を強い日差しから守ってくれ、砂漠のなかの緑にほっとする。近くに、井戸が存在することもある。


これら以外にも、逞しい植物がある。

「ソドムのリンゴ」だ。

その奇妙な名前と姿、最初に見たときには、いったいこれは?と思った。


































Photo: アドラール州 Vallée Blanche の「 ソドムのリンゴ 」


ソドムのリンゴ( Pomme de Sodome)、学名はカロトロピス・プロセラ(Calotropis procera)アラビア語ではウシャル(عشار)だが、モーリタニアでは「トゥルージャ」と呼んでいる。


低木または小高木で、1メートルから4メートルほどに成長するが、8メートルほどの巨木を見たときには驚いた。

花は白く、先端が赤紫色で、紫陽花のように集まって咲き、キャベツに似た葉は、常緑で硬い。

果実は緑色、心臓の形のような楕円形で、リンゴを思わせる。

白色の亀裂のあるコルク質の樹皮で覆われた幹に、根は深さ3〜4メートルの深い主根と、木質の側根を持つ二次根系。株が傷つくと不定芽を素早く再生させる。横に倒れたまま何本も根を出して成長している木を見かけることが多い。


緑の植物なので、食べられるのでは?と思いがちだが、この植物のすべての部分から白い乳液(ラテックスが含まれる)が分泌され、粘膜に毒性がある。この樹液のせいで、草食動物はあえて食べようとしない。

人間にとっても、触れただけでもかぶれる危険もあり、目に入ると深刻な病気や失明につながると言われている。

そんなことからか、この有毒果実(?)は、旧約聖書でヤハウェの裁きにより滅ぼされた背徳の街ソドムと、禁断の果実になぞらえたリンゴから、「ソドムのリンゴ」と呼ばれるようになったらしい。


「リンゴ」は熟すと10センチほどになり、はじけ、なかから大量の白い綿毛が飛散する。その綿毛の先端には種子がついていて、風や動物によって運ばれ、砂漠、とりわけワジ(涸れ谷)で発芽の機会をじっと待つ。一旦、根付くと強い。冬にソドムのリンゴが増えていたなら、今年は砂漠に雨が降ったのだと理解する。


このようなソドムのリンゴだが、実は砂漠では役立っている。

大きく成長し、枯れると、幹は砂漠の家に利用され、立派な建築素材となる。

砂漠ではテント以外に、鉄道の廃棄軌条(レール)やアカシアの木で骨組みをし、砂漠の植物で覆った家を造るが、天井の梁にソドムのリンゴの太い幹が使われる。そんな家は、夏は涼しく、冬は風を遮断してくれるので、時々、借用することもある(*1)

また、枯れた小枝は焚き付け用に使われる。野宿のとき、アカシアの枯れ枝(*2)とともに、ソドムのリンゴの枯れ枝も拾い集めるのが、私の役割となっている。


砂漠にあるもので無駄なものはほとんどない。

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(*1) 砂漠の家:強風のときのみ借用する. 持ち主が不在のときは、使用後、元どおりに戻しておく.

(*2) 枯れ木、枯れ枝:砂漠では生木を切ることはしない. あくまでも、枯れたものを利用する. 生木を焚き付けると、猛烈な煙が出る. 私は火おこしを得意とし、消火後、炭まで作り、ノマドに「ここに残らないか」と言われたこともある.

Calotropis procera

アドラール州:ジィヤーラ

一帯は「ソドムのリンゴの森」になっている


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