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Empreinte de chameau🐪ラクダの足あと

🌴モーリタニア🌙砂漠を旅する🌴 No.31  🐪 加藤智津子

砂漠の鳥、ムーラ・ムーラ: シロガシラクロサバクヒタキ


砂漠の旅の移動中、朝食、昼食はバケットとお茶で簡単に済ませることが多い。

きちんと食事をするのは夕食だけになる。

と言っても、料理人も兼ねるドライバーがラクダ肉と野菜を炒め、パスタを加え、圧力鍋で煮込むシンプルなノマド料理だ。

パスタ1袋(500グラム)を使った料理がホーローの大皿にドーンと盛られるが、そんなに食べられるものではない。

近くにノマドのテントがあれば、お裾分けもできるが、そういう状況はあまりない。

ならば、私たちが大好きなフェネックに食べさせたいと考える。

夜になると巣穴から出てきて活動するフェネックだが、離れた場所に置いてみても、警戒心が強く、容易に近寄ってきてはくれない。

残るは、砂漠の鳥「ムーラ・ムーラ」にあげよう、ということになる。

Photo:モーリタニア アドラール州 クサル・トローシャン

数キロにわたって続く11億年まえのストロマトライトの上のムーラ・ムーラ

(ストロマトライト:光合成によって地球に酸素を生成したシアノバクテリアと土砂などの堆積物が、何層にも積み重なって形成された岩石)


人の住む集落を過ぎ、砂漠に入ると、澄んだ美しい声で鳴きながら、最初に迎えてくれる鳥がムーラ・ムーラだ。


体色は光沢のある黒色だが、頭頂(頭部)が白く、帽子(あるいは冠)を被ったように見えることからTraquet à tête blanche(仏)/White-crowned Black Wheatear(英)という名前でも呼ばれる。

北アフリカから中東の砂漠地帯に生息し、鳥綱、スズメ目ヒタキ科(*1)、サバクヒタキ属で、種(学名)はOenanthe leucopyga。和名はそのまま「シロガシラクロサバクヒタキ」(*2)という。

頭頂だけでなく、羽毛で被われた下腹部と、尾羽の裏も白い。


大きさは17cm前後、翼を広げると30cmほどになり、飛行から着地するとき、翼が扇のように広がり美しい。

体重は23〜32g。鳥類は、翼についた風切羽を動かすことによって飛翔する。そのための強い筋肉が体の1/4〜1/3を占めている。

他に骨格、呼吸器、循環器、消化器、生殖器等が小さく、機能的に収まっている。

主食は昆虫等が多く、鋭敏な視覚をもつ大きな目と細いくちばしで、獲物を狩る。ヒタキ科に見られる採食法で、滑空して飛行中の昆虫を捕らえることもある。他に種子や果実、ときに小型の爬虫類などにも目を向けたりもする。


ムーラ・ムーラの主な生息地は岩山の砂漠、石の多い平原、渓谷、ワジ(涸れ川)、崖などで、私の旅のルートと重なる。

風を避けて、巨大な花崗岩の下でお茶を飲んでいると、遠巻きにしてこちらの様子を見ていることも多い。

ドライバーは「砂糖をたくさん含んだお茶には栄養があるから、ムーラ・ムーラは好きなはず」と、茶殻を近くに置く。お茶に入れるあの大量の砂糖が少しでもエネルギー源になれば嬉しい。


砂漠を代表する鳥は「幸福の鳥」とも言われていて、「Moula-moula」という名のサハラツアーまである。

砂漠では、誰もが愛情を込めて「ムーラ・ムーラ」、「ムラ・ムラ」とも呼ぶ。


翌朝、ムーラ・ムーラが食べ残したパスタのお皿の縁に止まった。

それにしても、一羽で食べるには多すぎる。

結局、アカシアの根元に置いておくことになる。

あとは、ラクダの親子が通ることを願いたい。

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(*1) ヒタキ科 以前はスズメ目、ツグミ科だったが、スズメ目、ヒタキ科になった

(*2) シロガシラクロサバクヒタキ 鳥類学者、蜂須賀正氏採集の仮剥製に記載(山階鳥類研究所 )

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