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Empreinte de chameau🐪ラクダの足あと

  • 執筆者の写真:  加藤智津子 | Chizuko Kato
    加藤智津子 | Chizuko Kato
  • 2024年11月30日
  • 読了時間: 4分

更新日:1月18日

🌴モーリタニア🌙 砂漠を旅する🌴 No.34  🐪 加藤智津子   

 サハラの石、ストロマトライト Stromatolite ②


その日は、翌日から遠い砂漠の村を訪ねる計画だったので、宿に泊まらず野宿をすることにした。

夕食は、アタールでよく行くアガディール出身のモロッコ人の食堂からテイクアウト。

ところが、選んだ野宿場所はポツンポツンと家もあり、街中からもそう遠くないように思えた。野宿は砂漠と考えている私としてはやや不満だった。

それでも、いつものように周辺を散策し始めると、何と、辺りにはストロマトライトの層が続いていた。しかも、初めて見るタイプだった。光源の少ない深い海の中で成長したのかもしれない、小さなストロマトライトが密集していた。

これで、場所が未確認の1カ所を入れると、6カ所目のストロマトライトを見つけたことになった。





























Photo: アドラール州 Ksar Torchane ストロマトライトConophytonコノフィトン


モーリタニアのストロマトライト層群は、タウデニ堆積盆地(*1)に広く露出している。

タウデニ盆地は先カンブリア時代の安定した大陸地殻の一部である西アフリカクラトン(楯状地)という台地の中にある。地球上にはまだ生物がいない岩石だけの陸塊だった約11億年前の中原生代にあたる。

 

そんな地質時代のモーリタニアは、現存するほとんどの大陸が集まった超大陸「ロディニア」のひとつとして南半球に位置していた。

ロディニアは、その後、約10億年前になると集結して南極に移動する。

約9億年前にはひとつの大陸に集合するが、その後、北半球へ移動し始め、約8億数千万年前には徐々に分裂を起こし始める。

ロディニアの大陸集結、分裂は続いた、、、。これらの大陸が分裂したとき、大陸間に多くの浅い海洋環境が作られた。今、砂におおわれているタウデニ盆地もそうしてできた。

浅海、より強い太陽(*2)、シアノバクテリアは繁栄し、原生代のストロマトライトは増え続け、多様化のピークに達した。

 

しかし、7億5千万年前ごろにはロディニア大陸の分裂が進み、その後はゴンドワナ大陸等に分かれていく。

ところが、地球は赤道までもが凍る全球凍結(スノーボールアース)に陥り、氷床や海氷に覆われて真っ白になってしまう。モーリタニアはその痕跡をも随所にとどめている(*3)

やがて、全球凍結は終わるが、生き延びたシアノバクテリアは活動を続け、酸素を供給し、ストロマトライトも作り続けていた。 

このころ、海底にはエディアカラ生物群が登場し、エディアカラ紀(Ediacaran)となり、先カンブリア時代は終わり、顕生代(*4)が始まる。

カンブリア紀では肉眼で見える生物が登場し、シアノバクテリアは海中を動き回る生物に捕食される(*5)ようになり、ストロマトライトも原生代のような多様化を回復することはなかった。

(それでも、存在し続けたのが、現在もバハマ諸島、西オーストラリア州シャーク湾で見られる)


このような経緯を経て、モーリタニアのストロマトライトはタウデニ盆地内に約11億年前のものとして存在している。それらは多種多様で、厚さ約750m、アタール層群として10のストロマトライト層で構成されているが、堆積された年代も異なり、それらの全てが層序図を見るようには路頭に現れてはいない。

 

だが、アタールではストロマトライトは、ごく普通に日々の生活のなかにある。

ストロマトライトを割って生えたアカシアの葉を食むためにそこへよじ登るヤギ。

海原のように広がる薄紫や水色のストロマトライトの中を砂漠道路が続く。

知人宅を訪れたとき、街なかの道路のところどころからストロマトライトがのぞき、玄関には敷石となり、壁にも塗り込まれていた。集落がストロマトライトの上にあるのだ。

 

大気の酸素化に大きな役割を果たしたシアノバクテリアの働きによって、私たちは地球に生きている。

シアノバクテリが長い時間をかけて作り出した構造物、ストロマトライトからは地球のことも知ることができるようになった。それ以上に、ストロマトライトは造形的にも美しい。

そんなストロマトライトを求めて、砂漠の旅に出ることにしよう。____________________________________________________________________________

(*1) タウデニ盆地: ラクダの足跡、砂漠を旅する「No.34」サハラの石、ストロマトライト ① 

(*2) 原生代の前の太古代の太陽は、そう明るくはなかった(現在の70%程度)

(*3) 全球凍結: ラクダの足跡、砂漠を旅する「No.19」② 「すべての ひとに 石が ひつよう」

(*4) 顕生代: 肉眼で見える生物が登場する. 約5億3880万年前から始まる

(*5) 様々な生物が出現したためにその餌となり、すぐにその8割は滅んだ


ストロマトライト断面


 
 
 

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